人生コラム

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北のガリバーたち

スウェーデンの風景写真

友人の留守中、犬の散歩を頼まれた。犬と散歩したことはないけど、おもしろそうだから引き受けた。大型だがおとなしく聞き分けがいい。 肌を刺す朝の風を受けながら、私は11年前の春に訪れたスゥエーデンを思い出した。桜満開の日本から十数時間、そこはまだモノトーンの世界。 湖も凍っていた。最初のカルチャーショックはトイレ。便座が大きい、高い。行きかう人も大きい、高い。まるでガリバーの国だ。便座の高さに納得だ。 ついでに言うと、湯船も深い。つまり、縁が高いから、気をつけないとガツンと痛い。 白夜の国の人々は日光を大事にする。日の射さない極夜の季節に備えて、光を体にしみこませるのだ。だから極寒の中で、大人も子どもも外にでる。 犬連れで散歩をする人も多い。その犬がまた大きい。そしてどんなところにも堂々と入ってくる。ワンともニャンとも言わない無口な犬たちだから、怖くはないが、はじめは驚いた。図書館には犬の銅像まである。この国の犬たちは税金を払っていて、図書館はその税金で造られたから、敬意を表して犬の銅像なんだと聞いてまた驚いた。

バス停にも犬が並んでる。、税金払ってるんだから乗るだろう。もう驚かない。しかし、ベビーカーを押すママ達も並んでる。『どうするつもりだろう?』日本では考えられない光景だ。 心配している間にバスが来た。と、中から乗客のガリバー達数人が降りるが早いかベビーカーをひょいと持ち上げ車内へ。驚いた。しかし、「だって、一人じゃ大変でしょ?」彼らは穏やかに答えた。 私が本当に小さいのは体ではなく心なのかもしれないと思った。 静かなガリバー達は、きっと遅い春を静かに待っていることだろう。 そろそろ帰ろうか。私はリードを引いた。

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