人生コラム

columuns

はじめてのプレゼント

少女の写真

「プレゼント、何がいい?」進学のため、昨年家を出た娘からの電話。私の誕生日はひと月も先だ。 レポートで忙しくなるから、気になることは早めに済ませたいらしい。 「なんにもいらないよ。」 その気持ちだけで、母は充分。 「それは困るよ。癒しグッズとピアス、どっちがいい?」 困るんだったら、気の毒だ。 「じゃあピアス。クールだけど女らしいの。あとは適当で。」と、わかりやすく説明してあげた。 数日後、イメージ通りのピアスが届いた。誰かのために何かを選ぶのが好きだと、彼女は言う。遠慮しなくてよかった。

娘からの初めてプレゼントは、彼女が4歳のときだ。ポケットに手を突っ込み、この上なく幸せそうな顔で、そろりそろりと私に近づいてきた。あの日の光景をはっきり憶えている。その幸せそうな顔には、複数の黒い斑点が付いていた。満面の笑み、そろり歩き、黒い点、この関係が私には理解できなかった。娘が私の前にたどりつくまでは・・・。 「かわいかったから、連れてきたよ。コレ全部お母さんにあげる!」 コレは、庭で見つけただんご虫だった。まずポケットに入れたが、それでは足りず、顔にも這わせて連れてくることにしたらしい。コレ達がポケットから逃げないように手でふたをし、顔から滑り落ちないようにそろり歩きだったわけだ。私は、軽いめまいを感じながらも、その屈託のない表情がうれしかった。 ピアスと一緒に、弟への贈り物もあった。リスのぬいぐるみだ。 「俺をいくつだと思ってるんだよお。」 苦笑しながら、15の息子はすぐに机に飾った。 だんご虫、ピアス、リス、「誰かのために、何かを」 娘の気持ちはあの時と同じ。母にはそれが何よりの贈り物であった。

その他のコラム

わたしがアナウンサーになったわけ

北のガリバーたち

ラジオが好き

予習ノススメ

夢見るおとな達

あこがれのブロードウェイ

背中で子育て

千の風を感じて

上へ戻るボタンの画像